苦手な上司の、あの言い方。
同僚から届いた、短すぎるメッセージ。
読んだ瞬間にカッとなって、言い返したくなる。そんな日はありませんか。
30代になると、上からも下からも横からも、関わる人が増えます。以前、【30代会社員】職場の人間関係に疲れたら「関わり方を減らす」という選択という記事で、仕事そのものより「人とのやり取り」のほうに気力を使っている、と書きました。
眠れない夜について書いた記事でも、布団に入っても頭が止まらない理由のひとつに、「なんとなく引っかかった上司のひとこと」を挙げました。言われたその場だけでなく、あとから何度も思い出してしまう。イライラは、そうやって心の余白を少しずつ削っていくように思います。
イライラしたときは「ため込むより、吐き出したほうがスッキリする」とよく言われます。でも、心理学の研究を調べてみると、どうもそう単純ではないようです。
この記事では、怒りについての研究で「どんな実験をして、何が分かったか」を、できるだけ平易に紹介します。そのうえで、研究から導いた「今日からできる小さな実験」を4つ書きます。後半では、この記事で紹介する研究者が一般の読者に向けて書いた本も2冊紹介します。
全部やらなくて大丈夫です。気になったところだけ、読んでもらえたらうれしいです。
イライラが大きくなるのは「読み違い」があるから
このブログでは今、人間関係の悩みを、心理学の研究をもとに考えるシリーズを書いています。軸にしているのは、「人間関係の悩みの多くは、相手の反応の読み違いから来ているのかもしれない」という考え方です。
怒りについて調べてみると、読み違いは2つあるように思いました。
- 自分の気持ちの扱い方の読み違い(吐き出せばスッキリする、がまんすれば消える)
- 相手についての読み違い(わざとやっている、そういう性格の人だ)
ここからは、この2つに関係する研究を順番に見ていきます。
「発散すればスッキリする」は、実は逆効果になりやすい
サンドバッグを叩いても、怒りはおさまらなかった
アメリカの心理学者ブッシュマン(2002)は、怒りを発散すると本当にスッキリするのかを、実験で確かめました。
参加者は、まず実験の中で怒らされます。そのあと、次の3つのグループに分けられました。
- サンドバッグを叩きながら、怒らせた相手のことを考えるグループ
- サンドバッグを叩きながら、体を鍛えることを考えるグループ
- サンドバッグを叩かないグループ
論文によると、1つのグループに200人ずつが参加しています。
結果は、相手のことを考えながら叩いたグループが、いちばん強く怒りを感じていました。そのあと、怒らせた相手に大きな音を浴びせる機会が与えられると、このグループがいちばん攻撃的でした。
論文の要旨では、相手のことを考え続けることは怒りと攻撃を減らすどころか増やし、何もしないほうが、怒りを発散するより効果的だった、とまとめられています。
154件の研究をまとめると「落ち着かせる」ほうが効いていた
もうひとつは、ブッシュマンらの研究チーム(2024)による分析です。怒りへの対処法を調べた154件の研究(参加者は合わせて10,189人)をまとめて分析しました。
比べたのは、次の2種類の活動です。
- 体の興奮を下げる活動(深呼吸、マインドフルネス、瞑想など)
- 体の興奮を上げる活動(サンドバッグを叩く、ジョギング、自転車こぎなど)
結果は、興奮を下げる活動が、怒りと攻撃的な行動を減らしていました。性別や年齢、人種、文化がちがう人たちでも、同じような結果だったとされています。一方で、興奮を上げる活動は、全体としては効果がみられませんでした。
著者たちは、怒りを吐き出すことや、走りに行くことが効果的な対処法だという考えは支持されない、と書いています。
言い返す。強い言葉で返信を打つ。物に当たる。どれも「吐き出す」に近い行動です。この2つの研究から考えると、こうした発散は、スッキリするどころか、怒りを長引かせてしまうことがあるのかもしれません。
がまんするのと、見方を変えるのは違う
では、ぐっとこらえて、顔に出さなければいいのでしょうか。
グロス(1998)は、120人の参加者に、気分が悪くなるような映像を見てもらう実験をしました。参加者は、次の3つのどれかを指示されます。
- 何も感じないように、映像の見方を変えて見る(見方を変える)
- 見ている人に気づかれないよう、気持ちを表情や態度に出さない(抑え込む)
- ふつうに見る
どちらの方法でも、表情などに出る反応は減りました。ただ、見方を変えた人は嫌な気持ちそのものが減ったのに対して、抑え込んだ人では、体が緊張していることを示す反応(交感神経の働き)が高まっていました。
グロスとジョン(2003)は、5つの研究で、ふだんどちらの方法をよく使う人なのかを調べています。見方を変えることが多い人ほど人間関係がうまくいっていて、抑え込むことが多い人ほど人間関係がうまくいっていない、という関係がみられました。
これは「関係がみられた」という調査です。見方を変えれば人間関係がよくなる、と確かめたものではありません。それでも、「がまん」と「見方を変える」は別のものだ、ということは知っておいて損はないと思います。
ここまでの研究を、表にまとめておきます。
| やり方 | 例 | 研究で分かったこと |
|---|---|---|
| 発散する | 言い返す、強い言葉で返信する、物に当たる | 相手のことを考えながらサンドバッグを叩いた人は、怒りも攻撃的な行動も強かった(ブッシュマン、2002) |
| 抑え込む | 顔に出さず、ぐっとこらえる | 表情は抑えられたが、体の緊張を示す反応が高まった(グロス、1998) |
| 見方を変える | 出来事のとらえ方を変えてみる | 嫌な気持ちそのものが減った(グロス、1998)。ふだん使う人ほど人間関係がうまくいっている傾向(グロスとジョン、2003) |
| 落ち着かせる | 深呼吸など、体の興奮を下げる | 怒りと攻撃的な行動が減った(ブッシュマンらの研究チーム、2024) |
「あの人はそういう性格だ」と決めつけやすい
言わされた意見でも、本人の考えだと思ってしまう
2つ目の読み違いは、相手についてのものです。
ジョーンズとハリス(1967)の実験では、参加者は、ある人が書いた(または話した)意見を読んだり聞いたりして、その人の本当の考えを推測しました。意見は、議論が分かれるテーマについてのものです。
このとき、その立場は本人が選んだものではなく、割り当てられたものだと伝えられる場合がありました。それでも参加者は、書かれた意見に近い考えを、その人自身が持っていると推測する傾向がありました。
論文では、人は状況の制約を考えに入れてはいるものの、本来考えるべきほどには重く見ていないのかもしれない、とまとめられています。
心理学者のロス(1977)は、人が他人の行動の原因を考えるときに起こる偏りを、論文で整理しました。ジョーンズとハリスの実験のように、行動の理由を考えるときに、置かれた状況を軽く見て、その人自身の考えや性格のせいにしてしまう。こうした偏りは「基本的な帰属の誤り」と呼ばれています。ロスは2018年の論文で、この名前をつけたのは自分だとふり返っています。
職場に当てはめてみると、上司のきつい言い方を「この人は意地が悪い」と、性格のせいにしたくなることがあります。でも、その上司も、さらに上から急かされているのかもしれません。
メッセージの「感じの悪さ」は、思ったほど伝わっていない
もうひとつ、メッセージの文面にカッとなるときに関係しそうな研究があります。
クルーガーら(2005)は、5つの実験で、メールでどのくらい気持ちや調子が伝わるかを調べました。メールでは、身ぶりや声の調子が伝わりません。そのため、皮肉なのか冗談なのかといった調子を伝えるのは難しいのに、人は、自分が実際よりもうまく伝えられると思い込みやすいことが示されました。
その理由として、自分の視点から離れるのが難しいことが挙げられています。書いた本人には、自分が込めたつもりの調子で文が「聞こえて」しまうからです。
この研究は、送る側について調べたものです。ここからは私の考えですが、裏返すと、受け取る側の私たちが文面から感じた「冷たさ」や「とげ」も、相手が込めたものとは限らない、ということになりそうです。
少し離れた場所から、自分を眺める
では、怒りが湧いたあと、どう考えればいいのか。そこで出てくるのが「自己距離化」という考え方です。
クロスとアイダック(2011)は、嫌な出来事をふり返って理解しようとすると、かえって同じことをぐるぐる考えて、気分が悪くなってしまうことがあると指摘しています。そのうえで、少し離れた視点から自分を見る「自己距離化」が、うまくふり返るための鍵になる、という研究をまとめています。
怒らされた直後でも「壁のハエ」の視点は効いた
ミシュコウスキーら(2012)は、大学生を対象に2つの実験をしました(1つ目の実験は94人)。
参加者は、音楽を聞きながら難しい単語のパズルを解く課題の途中で、実験者から何度もきつい言葉で注意されます。つまり、わざと怒らされます。その直後に、次の3つのグループに分けられました。
- その場面を、もういちど自分の目で体験するように思い出す
- その場面から離れて、遠くから眺めるように思い出す(壁にとまったハエのような視点)
- 特に指示なし
1つ目の実験では、離れて眺めたグループは、ほかの2つのグループより攻撃的な考えが少なく、怒りも小さくなっていました。2つ目の実験では、怒らせた相手にヘッドホンで音を浴びせる場面で、離れて眺めたグループの攻撃的な行動が少なくなっていました。
怒りが湧いた「その場」でも、離れて眺めることはできる。論文はそうまとめています。
自分の名前で語りかけると、距離をとりやすい
クロスら(2014)は、7つの研究(参加者は合わせて585人)で、頭の中で自分に語りかけるときの言葉の選び方を調べました。
「私は」ではなく、自分の名前など「私」以外の呼び方で自分に語りかけると、自分と距離をとりやすくなりました。初対面の人によい印象を与える、人前で話す、といった緊張する場面でこの語りかけ方をした人は、苦痛が少なく、ほかの人から見た出来もよかったとされています。
これは怒りではなく、緊張する場面についての研究です。ただ、「離れて眺める」ための入り口として、使いやすい方法だと思います。
ここまでの研究を、怒りが湧いたときの3ステップにまとめると、こうなります。

今日からできる小さな実験4つ
ここからは、紹介した研究から導いた「小さな実験」を4つ書きます。研究と同じ結果が出ると約束できるものではありませんが、どれも、すぐに試せる小さなことです。
実験1:送信する前に、ゆっくり呼吸する
カッとなるメッセージが届いたら、返信はいったん下書きのままにしておきます。そして、送る前にゆっくり呼吸をします。
【30代会社員】職場の人間関係に疲れたら「関わり方を減らす」という選択の記事で、私は返信を「すぐにしない」と決めている、と書きました。急ぎでないものは、時間を決めてまとめて返す。返信のタイミングを自分で決めるだけで、頭の中が少し静かになると感じています。
呼吸については、朝の習慣として、4秒かけて鼻から吸って、6秒かけて口からゆっくり吐く腹式呼吸を5回しています。続けているうちに、ささいなことでイライラすることが減ったように感じています。そのときの話は、【30代会社員】“脳の疲れ”をリセットしたい朝に。私の5分習慣に書いています。苦しくなるほど深く吸う必要はありません。息苦しさを感じたら、ふだんの呼吸に戻してください。
研究とのつながりは、ブッシュマンらの研究チーム(2024)です。深呼吸のように体の興奮を下げる活動は、怒りと攻撃的な行動を減らしていました。ただ、研究が試したのは「落ち着かせる活動」で、「返信を待つこと」そのものではありません。返信を少し待つのは、そのあいだに体を落ち着かせるための工夫です。
すぐに返さなければいけない場面なら、「ちょっと確認してから返事します」と一言だけ返して、考える時間をもらう方法もあります。この一言の話は、【30代会社員】仕事を断れないときに。即答しない「断る練習」に書いています。
実験2:自分の名前で、状況を言い直す
イライラしたら、頭の中で、自分の名前を主語にして状況を言い直してみます。
たとえば「(自分の名前)は今、〇〇さんの言い方にイライラしている。いちばん引っかかったのは、どの言葉だろう」のようにです。声に出さなくても、心の中で言うだけでかまいません。
研究とのつながりは、クロスら(2014)とミシュコウスキーら(2012)です。自分の名前で語りかけると自分と距離をとりやすくなり、怒らされた直後でも、離れて眺めた人は怒りや攻撃的な行動が少なくなっていました。
自分の目で場面をもういちど体験するように思い出すと、怒りは続きやすい。だから、少し離れた場所から自分を眺める。自分の名前は、そのための手軽な道具になると思います。
実験3:相手の事情を3つ考えてみる
「あの人は嫌な人だ」と決める前に、相手がそう言った(書いた)理由になりそうな事情を、3つ挙げてみます。
- 会議の直前で、急いでいたのかもしれない
- スマホから短く打っただけなのかもしれない
- その人も、上から急かされていたのかもしれない
事情が本当かどうかは、分からなくてかまいません。目的は、相手を許すことではなく、自分の中の「決めつけ」を少しゆるめることです。
研究とのつながりは、ジョーンズとハリス(1967)、ロス(1977)、クルーガーら(2005)です。人は行動の理由を状況より性格のせいにしやすく、文面の調子は思ったほど正確には伝わりません。事情を考えるのは、グロス(1998)でいう「見方を変える」の練習でもあります。
ただし、相手の言動が度を越えていると感じるとき(人格を否定される、ひどい言葉がくり返される など)は、見方を変えて済ませる話ではありません。社内の相談窓口や、信頼できる人に相談してください。
実験4:紙に書いて、丸めて捨てる
最後は、日本の研究です。
金谷と川合(2024)は、名古屋大学の研究チームによる実験です。参加者は社会問題について意見を書き、その文章に、低い評価と侮辱するようなコメントを受け取ります。そのあと、怒りを感じた出来事の原因と、そのとき考えたことを紙に書きました。
半分の人は、その紙をゴミ箱に捨てました(2つ目の実験ではシュレッダーにかけました)。残りの半分は、紙を捨てずに手元に残しました。
どちらの人も、侮辱されたあとには怒りが高まっていました。でも、紙を捨てた人は、怒りが侮辱される前と同じくらいまで下がりました。紙を残した人は、侮辱される前より高いままでした。
以前、夜のルーティンの記事で、紙とペンで書くと動きがゆっくりになり、その「ゆっくり」が1日の終わりの切り替えにちょうどいい、と書きました。イライラした日は、その紙に怒りのことを書いて、丸めて捨ててみる。そんな使い方もできそうです。
職場で試すなら、書いた紙は人の目に触れないように、きちんと捨ててください。
4つの実験の早見表
| 悩み | 研究で分かったこと | やってみること |
|---|---|---|
| 言い返したくなる、強い返信を打ちたくなる | 発散は怒りを強めやすく、体の興奮を下げる活動は怒りを減らした | 送信する前に、ゆっくり呼吸する |
| 言われたことを何度も思い出してしまう | 離れた視点で思い出した人は、怒りや攻撃的な行動が少なかった | 自分の名前で、状況を言い直す |
| 「あの人はそういう人だ」と決めつけてしまう | 人は行動の理由を状況より性格のせいにしやすい。文面の調子は思ったほど伝わらない | 相手の事情を3つ考えてみる |
| がまんしても、もやもやが残る | 怒りの原因を書いた紙を捨てると、怒りが侮辱される前と同じくらいまで下がった | 紙に書いて、丸めて捨てる |
正直に書くと、ここで紹介した研究の多くは、アメリカなど海外の大学で行われた実験室での研究で、参加者は大学生が中心です。金谷と川合(2024)は日本の研究ですが、分析した参加者は2つの実験で50人と48人の、小さな研究です。効果の大きさも、人によって違うと思います。それでも「発散するより、落ち着かせる」という方向は、154件の研究をまとめた分析でも示されています。
なお、怒りがおさえられない、イライラや気分の落ち込み、眠れない日が続くなど、心や体の不調が続くときは、ひとりで抱えずに医療機関や専門家に相談してください。会社に相談窓口や産業医がいれば、そこを頼るのもひとつの方法です。
怒りと「頭の中の声」を、もう少し知りたい方へ
ここからは、この記事で紹介した研究をしている研究者本人が、一般の読者に向けて書いた本を2冊紹介します。どちらも楽天ブックスで手に入ります。
内容は、出版社や書店の紹介文、目次をもとに書いています。
『Chatter(チャッター)』|頭の中のひとりごとと距離をとる
イーサン・クロスさんの本で、翻訳は鬼澤忍さん、出版社は東洋経済新報社です。クロスさんは、この記事で紹介した「自己距離化」や、自分の名前で語りかける研究をしてきた心理学者です。書店に載っている刊行当時の著者紹介では、ミシガン大学の教授で、感情と自制研究所の所長と紹介されています。
出版社の紹介では、私たちはいつも頭の中で自分自身と話をしていて、この「頭の中のひとりごと(チャッター)」が暴走すると、考えすぎに陥ったり、ストレスに飲み込まれたりするとされています。本では、それを制御するための26のツールが紹介されています。目次には、「問題からズームアウトする」「他人の視点を手に入れる」といった章が並んでいます。
言われたことを、あとから何度も頭の中で思い出してしまう方に向いていると思います。
『科学の知恵 怒りを鎮める うまく謝る』|怒りと謝罪の科学
川合伸幸さんの本で、講談社現代新書から出ています。川合さんは、実験4で紹介した「紙に書いて捨てる」研究の著者のひとりです。書店に載っている刊行当時の著者紹介では、名古屋大学大学院情報学研究科の准教授で、専攻は比較認知科学・認知科学・実験心理学と紹介されています。
出版社の紹介では、怒り、謝罪、仕返し、赦しにまつわる科学を紹介する本だとされています。目次には「怒りのメカニズム」「怒りの抑え方」「効果的な謝罪」といった章があり、紹介文には、自分の怒りを収めるカギとして「傍観者の視点」を扱う項目も挙げられています。
怒りがどう生まれるのかという仕組みから知りたい方や、職場で謝る・謝られる場面のことも考えたい方に向いていると思います。
2冊の早見表
| 本の名前 | どんな本か | こんな人に向いている |
|---|---|---|
| Chatter(チャッター) | 暴走しがちな「頭の中のひとりごと」を制御するための26のツールを紹介する本 | 言われたことを、何度も思い出してしまう人 |
| 科学の知恵 怒りを鎮める うまく謝る | 怒り、謝罪、仕返し、赦しにまつわる科学を紹介する新書 | 怒りの仕組みから知りたい人、謝る場面のことも考えたい人 |
どちらから読むか迷ったら、早見表の「こんな人に向いている」の列から、今の自分に近いほうを1冊だけ選んでみてください。
よくある質問
Q1. すぐイライラしてしまう自分が嫌になります。
怒りを感じること自体は、自然なことだと思います。この記事で紹介した研究も、怒りを感じないようにする方法ではなく、怒りが湧いたあとの扱い方を比べたものです。湧いてしまったあとに、発散するのか、抑え込むのか、それとも落ち着かせて見方を変えるのか。そこを選べるようになれば、それでじゅうぶんだと私は思っています。
Q2. 相手が明らかに理不尽なときも、見方を変えたほうがいいのでしょうか?
見方を変えるのは、相手を許したり、がまんしたりするためではなく、自分が怒りに振り回されないための方法です。相手の言動が度を越えていると感じるとき(人格を否定される、ひどい言葉がくり返される など)は、見方を変えて済ませず、社内の相談窓口や信頼できる人に相談してください。
Q3. 本はどちらから読めばいいですか?値段も気になります。
2冊とも読まなくて大丈夫です。怒りの仕組みから知りたい方は『科学の知恵 怒りを鎮める うまく謝る』、考えすぎてしまう方は『Chatter(チャッター)』から開いてみるのもいいと思います。この記事を書いた時点(2026年10月)では、楽天ブックスでの価格は836円と1,980円(税込)でした。価格や在庫、届く日は変わることがあるので、購入する前に商品ページで確かめてください。
まとめ:次にカッとなったら、まず1つだけ
職場の人にイライラするとき、研究で分かっていることを書いてきました。
- 怒りを発散しても、スッキリするとは限らない。体を落ち着かせるほうが、怒りは減りやすい
- がまんして抑え込むのと、見方を変えるのは違う
- 少し離れた場所から、自分を眺める(自分の名前で言い直す)
- 相手の行動は、性格より状況のせいかもしれない。文面の調子は、思ったほど伝わっていない
全部やらなくて大丈夫です。私も、返信をすぐにしないと決めていても、毎回うまくできているわけではありません。
まず1つ試すなら、次にカッとなるメッセージが届いたとき、返信を下書きのままにして、ゆっくり呼吸をしてみる。そのくらいの軽さで、試してもらえたらうれしいです。
本を1冊だけ選ぶなら、仕組みから知りたい方は『科学の知恵 怒りを鎮める うまく謝る』、頭の中のひとりごとに振り回されがちな方は『Chatter(チャッター)』から開いてみるのもいいと思います。
イライラに、心の余白をまるごと持っていかれないように。今日のあなたに、少しでも余白が生まれますように。
参考にした研究
- Bushman, B. J. (2002). Does venting anger feed or extinguish the flame? Catharsis, rumination, distraction, anger, and aggressive responding. Personality and Social Psychology Bulletin, 28(6), 724-731. https://doi.org/10.1177/0146167202289002
- Kjærvik, S. L., & Bushman, B. J. (2024). A meta-analytic review of anger management activities that increase or decrease arousal: What fuels or douses rage? Clinical Psychology Review, 109, 102414. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38518585/
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